皆様こんにちは。
年末の風物詩といえば、年末ジャンボ宝くじ。
よく当たる!と評判の宝くじ売り場の前には
長蛇の列ができますね。
そこで時節柄、今日のテーマは
『当たらない宝くじをついつい買ってしまう心理』についてです。
今年の年末ジャンボは、一等の当選金額は7億円で
前後賞合わせた最高当選金額はなんと10億円です!
夢のある金額ですね。
日本宝くじ協会が去年行った調査によると
宝くじを月に1回以上小運輸している常連購入者は
約1044万人もいるそうです。
ただ、残念ながら「お金を効率的に増やす」という点から見ると
これは「お金をドブに捨てる」行為だと言わざるを得ません...。
「うるさーい!夢を買ってるんだから余計なお世話だ!」
という声が聞こえそうですが
今回は、その余計なお世話の話をしましょう。
まず、1等(25本)に当選する確率はどれくらいだと思いますか?
これは、2000万分の1です。
パーセンテージにすると、0.000005%の確率。
(ちなみに、東京都と埼玉県の全住民を対象にしたくじ引き大会で
当たりくじが1本しかない、というのと同じ確率です)
少しでも当たる確率を上げるために
たくさん買う方もいると思います。
その場合、10枚(3000円)買うと、当たる確率は200万分の1。
100枚(3万円)買うと、当たる確率は20万分の1。
1000枚(30万円)買っても、当たる確率は2万分の1です。
(ちなみに2万分の1は
横浜アリーナや武道館が満員になっても
一人当選者がいるかどうかという確率...)
それだったら、30万円分で上場会社の株を買うか
日経平均レバレッジETFでも買った方が
よほど効率良く資産を殖やせます。
それなのに、なぜ一攫千金を夢見て
宝くじを「つい」買ってしまうのかというと
私たちは「必ずしも確率を客観的に捉えていない」からです。
確率が0か100%でない限り
その間の確率を見積もる場合
私たちは「客観」ではなく「主観」で判断しがちになります。
例えば、近所の宝くじ売り場でたまたま高額当選が出ると
「私もここで買えば当たるんじゃないか!」と思ったり
テレビCMなどで「1等がなんと25本も!」と宣伝されると
分母の数を無視して当たる確率を過大に見積もってしまいます。
これは、行動経済学の
『確率加重関数』という言葉で説明できます。
めったにない結果に対して
確率に見合わない過大な重みがつけられてしまう事です。
ちょっと専門的な言葉になりますが
ここには
「注意の一極集中」
「確証バイアス(自分の考えは正しい!と根拠なく思いこむ事)」
「認知容易性(簡単に理解できる事)」
という心理メカニズムが働いています。
もう少しかみくだくと、私たちが「何かが起こる!」と感じる確率判断は
「もっともらしいシナリオがいかにスムーズに思い浮かぶか」
にかかっているという事です。
宝くじ以外にも
自動車事故に遭う確率の方が圧倒的に高いのに関わらず
「飛行機に乗ったら落ちるかもしれないから、乗らない!」
「あの国に行ったらテロに遭うかもしれないから、海外には行かない!」
と感じるのも、その事象のビジュアルの強烈さと
確率の過大な重みづけによるものです。
なぜこのような不合理な心理があるのかというと
私たちは、「奇妙な事、普通と違う事、異常な事」に注意を向ける能力が
備わっているからです。
私たちが「何か起こりそう!」というを判断する時は
「イメージしやすさ」ではなく
「分母から導き出す確率」を意識しなければいけません。
宝くじを買うのはもちろん本人の自由ですが
10億円を手にしても、その金銭的価値に関わる幸福度は「快楽順応」によって
2年後にはほとんど失われることを、どうぞご理解下さいね。
参照:
『ファスト&スロー(下)』ダニエル・カーネマン
『週刊東洋経済』2017年11月25日号